大豆イソフラボンはエストロゲンとの構造類似性からフィト(植物)エストロゲンと呼ばれ、エストロゲン関連のがんや骨粗鬆症の予防に役立つことで知られている。しかし、この物質の生体内利用を変化させる食品因子に関する研究は少ない。食品中のフィトエストロゲンのほとんどは配糖体として存在するので、フィトエストロゲンの吸収には腸内細菌による糖鎖の切断が必要である。フラクトオリゴ糖(FOS)は難消化性、発酵性の糖質で、腸管でのビフィズス菌などの成長を促進する。したがって、FOSはフィトエストロゲン配糖体の体内利用率を修飾し、その吸収を促進、生活習慣病などの疾病に有用であることが期待される。 そこで平成13年では、イソフラボン胃内単回投与による3種静脈より採血した血中および尿中ゲニステインおよびダイゼインの経時変化におよぼずFOS摂取の影響について検討した。対照およびFOS摂取ラット門脈血中ゲニステインは1h後に吸収ピークがみられ、その後急速に減衰した。中心静脈血中濃度は門脈血の約半量となった。FOS摂取ラットでは、尾静脈血中ゲニステインおよびダイゼインは24-48時間後においても検出された。やかであった。尿中24および48時間後の両イソフラボン排泄量は、FOS摂取により有意に増加した。 平成14年度においては、胃切除(GX)後の骨形成不全と貧血に対するイソフラボンとFOSの併用摂取の効果について検討した。GXにより大腿骨骨端部海綿骨の骨密度(BMD)および骨破断強度は減少したが、イソフラボンおよびFOSの併用摂取によりその減少は抑制された。特にイソフラボンおよびFOSの併用摂取では、強いエストロゲン様活性をもつエクオールのダイゼインからの産生を促進した。さらにイソフラボンおよびFOSはGXにより増加した肝臓中過酸化脂質および腫瘍マーカーである血中TNF-αの増加を抑制した。 以上の結果により、FOSはイソフラボンの体内利用率を促進し、その協調作用により胃切除後障害である骨形成不全と貧血予防効果を示すことが示唆された。
|