本年度も昨年度に引き続き、ゾル中にゲルが分散したゾル-ゲル混合系食物の飲み込み特性について検討を行った。モデル系のゾル-ゲル混合試料を調製するため、低強度寒天および高粘弾性寒天をゲル化剤として用い、4〜5mmの球状ゲルを調製し球状ゲル試料とした。昨年度は低強度寒天を用いて、球状ゲルおよびゾル試料の調製を行ったが、今年度は力学的特性の異なる寒天を用いて球状ゲルを調製し、低強度寒天で調製したゾル状試料と混合して混合系モデル試料を調製した。2種の物性の異なる球状ゲルについて、テクスチャー特性の硬さをほぼ等しい硬さ(破断応力)に調製した低強度寒天(1.5%)を用いた球状ゲルと高粘弾性寒天(0.48%)を用いた球状ゲルについて、他の力学的物性の比較を行った。その結果、低強度寒天を用いた球状ゲルの方が破断エネルギーが小さく、逆に、初期弾性率は大きく、動的粘弾性である貯蔵弾性率も大であることが明らかとなった。ゾル状試料については昨年同様0.6%低強度寒天を用いた。昨年度と同様の手法で、2種類の球状ゲルを用いてゾル-ゲル混合系を調整した。混合割合を3(ゲル):7(ゾル)、5(ゲル):5(ゾル)、7(ゲル):3(ゾル)の3段階に調整し、テクスチャー特性の硬さを測定したところ、7(ゲル):3(ゾル)の割合で混合した場合のみ有意差が認められた。しかも、硬さが等しい球状ゲルを混合したにもかかわらず、初期弾性率が大きい低強度寒天の方が硬いという結果となった。また、混合系試料について飲み込み特性を官能評価によって検討したところ、いずれの混合割合でも破断エネルギーの大きい高粘弾性寒天を用いた混合系試料の方が硬いと評価された。すなわち、混合系試料の飲み込み特性に影響を与える要因は球状ゲルの物性といえる。
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