本研究は、ゾル中にゲルが分散したゾル-ゲル混合系食物の飲み込み特性について検討を行った。低強度寒天を用いて流動性のあるゾル状試料と直径4〜5mmの球状ゲルを調製し、ゾル試料に球状ゲルを混合して、混合系試料を調整した。ゾル試料および混合系試料ともにテクスチャー測定を行い、硬さ(Ha)、付着エネルギー(Ea)、凝集性(Co)を求めた。さらに、混合系試料とゾル試料の官能評価を行い、「かたさ」「べたつき感」「残留感」「飲み込み易さ」を調べ、飲み込み特性を検討した。混合系試料は、Ha、Ea、Coにおいて、ゾル試料よりも高い値を示した。ゾル試料の「飲み込み易さ」は、ゾルのHa、Eaに依存して「飲み込みにくい」と評価された。次に、ほぼ等しい硬さの球状ゲルを低強度寒天と高粘弾性寒天を用いて調製し、流動性のある低強度寒天を用いたゾル試料と混合し、ゾル-ゲル混合系試料を調整した。球状ゲルの初期弾性率(Eo)の高い低強度寒天球状ゲルを用いた混合系試料の方が、テクスチャー特性の硬さ(Ha)が大となった。逆に、官能評価で「かたい」と評価されたのは破断エネルギーの大きい、高粘弾性寒天球状ゲルを用いた混合系試料だった。さらに、低強度寒天球状ゲルに、ヨーグルト程度の硬さにそろえたゾル試料(寒天および3種の市販増粘剤)を混合した、ゾル-ゲル混合系モデル試料について、テクスチャー特性と飲み込み特性の関係について検討した。4種のゾル試料は凝集性(Co)が大きいものほど「かたい」と評価された。混合系試料では、ゾル試料の力学的特性は飲み込み易さに影響を及ぼさなかった。
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