研究概要 |
近年,学術的な「食物」あるいは「食品」に対する国民的関心が日々高まって来ている.それは換言すれば自己の身体の科学的構成と健康科学に対する純粋な興味とも言える.しかし食感に関する表現は「柔らかい」「食べやすい」などの定性的な記述に留まっており,定量的な表示・表記には至っていないのが現状である.これまでにヒトの咀嚼運動をシミュレート可能な「咀嚼ロボット」は既に研究代表者らが開発している.そこで,本研究ではこれまでのロボット技術を用いて,定量的な食品物性値および物性計測方法を研究開発することによって,力学的妥当性のある「食べやすい食品」「高齢者にとって咀嚼しやすい食物」を示すことを長期的目的とし,その準備のために本研究は,ヒトの咀嚼運動時の顎運動様式を再現可能な多自由度ロボットを開発することを目的とする. 研究代表者らはロボット式食物物性計測・評価システムを開発し,日本咀嚼学会において研究成果を公開した.しかしながら,これまでの実験システムでは,ヒトの通常の咀嚼速度と同等の速度を出すには至らず,また,実験・計測の際にロボットに関する専門的な知識を必要としたシステムであった.そこで,本研究では「ヒトと同様の速度」でかつ「コンパクトで使いやすい機構」である計測・評価システムを開発することを目的とした.研究の結果,ヒトの通常咀嚼時の顎運動速度で実際の食物を破砕すると同時に,6自由度センサで破砕時の力とモーメントを計測可能なロボットを設計した.
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