研究概要 |
本年度の研究においては、米糠、コーンフィードおよび蕎麦の実に黒麹菌(A.saitoi)を接種し、製麹を行った。これらの麹よりメタノール抽出物を調製し、Amberlite XAD-2にて抗酸化成分の分画を行った。強い抗酸化性が認められた溶出画分より、ODSを用いた分取HPLCを繰り返すことにより、抗酸化物質を単離した。 各種機器分析等の結果、米糠麹より分離した物質を8-O-4'-ジフェルラ酸(8-O4'-diFA)、5.5'-ジフェルラ酸(5,5'-diFA)およびフェルラ酸(FA)と同定した。これらの抗酸化物質は、米糠のアルカリ分解によっても生成することより、糠層の細胞壁成分として存在し、製麹とともに麹菌の生産するエステラーゼによって生成したと推察される。8-O-4'-diFAはリポソームを用いた抗酸化試験法やDPPHラジカル捕捉能試験において、FAやα-トコフェロールより有意に(P<0.01)強い活性を示した。また、製麹日数の経過とともにdiFAおよびFAの含量は増加したが、同時に米糠麹の抗酸化力も増大し、両者の間には高い正の相関が認められた。 コーンフィード麹においても、製麹とともにその抗酸化力は増大した。抗酸化性成分として8-O-4'-diFAおよび5,5'-diFAを同定したが、他にCK-1物質を単離した。この物質もp-クマル酸以上に強い抗酸化性を示した。また、蕎麦の実を製麹させた場合にも、顕著な抗酸化力の増強効果が認められた。抗酸化性成分として、分子量290の物質を単離したが、この物質は同時にチロシナーゼ阻害活性やヒアルロニダーゼ阻害活性を示した。 他方、各種麹の凍結乾燥物よりエタノール抽出物を調製し、ラードに対する抗酸化性を調べたところ、蕎麦の実麹が最も強い活性を示した。また、この蕎麦の実麹は、直接にクッキーに添加された場合においても、その貯蔵時における脂質の過酸化反応を強く抑制した。
|