研究概要 |
強い抗酸化性を示す米糠麹(A.oryzae KBN 943)よりメタノール抽出物を調製し、Amberlite XAD-2にて抗酸化成分の分画を行った。80%メタノール溶出画分よりODSを用いた分取HPLCを繰り返すことにより抗酸化物質を単離し、それらを8-O-4'-ジフェルラ酸(8-O-4'-diFA)、5,5'-ジフェルラ酸(5,5'-diFA)と同定した。60%メタノール溶出画分より同定したフェルラ酸(FA)およびこれらジフェルラ酸は、米糠のアルカリ分解によっても生成した。これらのフェルラ酸類は、糠層の細胞壁成分として存在し、製麹とともに麹菌の生産するエステラーゼによって生成したと推察される。8-O-4'-diFAはリポソームを用いた抗酸化試験法やDPPHラジカル捕捉能試験において、FAやα-トコフェロールより有意に(P<0.01)強い活性を示した。また、製麹日数の経過とともにdiFAおよびFAの含量は増加したが、同時に米糠麹の抗酸化力も増大し、両者の間には高い正の相関が認められた。 8種類の麹菌を用いた蕎麦の実麹のスクリーニング試験の結果、A.saitoiを使用した麹が有意に強い抗酸化性を示し、その活性は製麹日数の経過とともに著しく増大した。特に胞子着生の進行とともに抗酸化力は増強し、その活性因子としてBK-1物質(分子量:290)を各種クロマトグラフィーにて単離した。この物質は、強いDPPHラジカル捕捉能、チロシナーゼ阻害作用、ヒアルロニダーゼ阻害作用を示し、また蕎麦の実麹中に高含量に存在した。 米糠麹、蕎麦の実麹、コーンフィード麹の抽出物は抗酸化剤として利用され得る可能性が示唆された。また、これら粉末をクッキーに添加し、その焙焼・貯蔵時における脂質過酸化を抑制できた。
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