研究概要 |
1)食材成分のうち,加熱により発熱や吸熱をともなった相変化を示すものが各種存在する.その状況を巨視的および微視的な手段を用いて追跡し,食材内部の熱移動を一般化し、定式化するための情報を収集することを目的として,以下の実験研究を行なった. 2)巨視的な方法として,一定加熱条件下での食材内部温度の上昇曲線に対する油脂系の融解・寒天・ゼラチン各水溶液ゲルのゾルへの転移,馬鈴薯・米・玉蜀黍各デンプン粒〜水系の糊化,鶏卵々黄・卵白・全卵の熱凝固等の影響を調べ,併せて各試料系の瞬間弾性率と温度との関係を追跡した.その結果,デンプン粒の糊化は温度上昇曲線に見るべき影響を与えないのに対し,脂質の融解やゲルのゾル転移に際し一時的な内部温度の低下が現われ、鶏卵各成分の熱凝固現象は広い温度範囲で温度上昇曲線に複雑な形状を与えた.したがって、デンプン系を除く他の試料では,昇温曲線の定式化に二つ以上の数式表現が必要であることが示唆された.これに対し,瞬間弾性率の加熱による変化はむしろ単調であるが,相変化に追随する系全体の弾性率の変化に各試料の特徴が認められる. 3)これら相変化の微視的な状況を光学顕微鏡により視覚的に観察するための予備実験として,顕微鏡周辺のシステムを組み立てる一方,相変化を検鏡するための試料調製法をデンプン粒の糊化,鶏卵各成分の熱凝固,寒天水溶液ゲルのゾル転移を対象に検討した.しかし、相変化が必ずしも成分の形状変化に対応せず,また高倍率での検鏡が不可能であったため,検鏡システムの改良と試料調製法の再検討が今後に残された課題である.
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