近年、心筋梗塞や脳血栓などの血栓症およびガンが急増し、社会的に重大な問題となっている。そこで本研究では、種々の発酵食品の生理活性物質を検索し、薬用効果を明らかにすると共に、生理活性物質を有する微生物を用いた新規な発酵食品への応用を試みた。したがって、本研究の主目的は血栓症およびガンに対して予防効果を示す健康・機能性食品の開発にある。本研究の主要な実験は、種々の微生物における生理活性物質の分離・同定、血栓症およびガン予防食品の開発である。平成13年度は、世界各国の発酵食品を可能な限り収集し、これらの発酵食品の抗トロンビン活性および線溶酵素活性等の生理活性について調べた。また、上記生理活性を示した発酵食品に使用されている微生物を分離し、その微生物の抗トロンビン活性および線溶酵素活性等の生理活性について調べた。その結果、味噌やチーズなどの発酵食品に顕著な抗トロンビン活性および線溶酵素活性が認められた。そこで、味噌やチーズから微生物を分離し、分離された微生物の両活性について調べたところ、抗トロンビン活性を示す微生物は存在せず、線溶酵素活性のみを示す微生物が分離された。したがって、味噌やチーズの抗トロンビン活性は、発酵中に生産されると予測された。さらに、これまでに本研究室で明らかにしてきた担子菌の抗トロンビン活性および線溶活性との比較を行ったところ、担子菌の方が、従来、発酵食品に使用されている微生物よりも活性が高いことが明らかとなった。そこで、担子菌の発酵力を用い、ビール、ワイン、チーズ、味噌を製造し、その抗トロンビン活性や線溶活性について調べた結果、いずれの発酵食品中にも顕著な活性が認められた。
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