研究概要 |
科研費を用いて現有ルミネセンス測定システム(NK95)の改良を行い,装置の測定精度向上を計った.主なる装置の改良点は(1)新たに熱ルミネセンス測定システムを付け加え,(2)集光システムをレンズ系に改善し,より高い集光率を確保した.(3)制御システムとしてウィンドウズ対応とした.以上の3点の改修を行い利便性は進歩した.しかし,緑色光励起による良好なシグナルの検出および制御系に改善の余地を残したままである. この改良装置を用いて日本で始めて東北地方の段丘上に発達するローム層の熱ルミネセンス,光ルミネセンス年代測定を試みた.その結果,ローム中に含まれる石英や長石類からのルミネセンスシグナルが検出され,遺跡包含層としてのローム層の年代測定が可能であることが明らかになった.石英では12万年前までの,長石では5万年前までの年代測定が可能であった.これ以上古い年代では期待年代に対し,測定年代の飽和現象が見られた.また,TLカラーイメージ(TLCI)では,ローム中の微細石英が青色TLを示すことから,これが黄砂と同様に低温型石英に起因することを明らかにした.この結果に基づいて,北海道今金町のピリカの遺跡包含層(ローム層)で旧石器時代の年代測定を北海道試料として初めて行ない,手法として用いることが可能であることを明らかにした.以上の成果を3つの学術論文として公表した.
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