研究概要 |
1.低温OSL測定の最適条件 高圧液体窒素によって冷却した試料台(120K)で、緑色光励起による低温OSL(低温BLSL)を測定した。石英の低温OSLは、従来、顕著な改善が見られなかった。今回は、プレヒートなし、プレヒート393Kで10秒、673Kまで昇温後に冷却の3条件で測定した。これらの測定条件の中ではプレヒート393Kで10秒の測定によって比較的良好なデータを得ることができた。この測定の過程で、673Kまで昇温後に冷却した石英のBLSL発光は極めて弱く、deep trapは一次反応であることが示唆された。 赤外光励起による長石またはFine Grainの低温IRSL測定では、データ自体は安定して再現性がよく、線量依存性も一見して直線的に見えるが、等価線量に相当する放射線量が実際よりは低く評価される傾向が顕著であった。この現象の物理的原因は現時点では不明である。 2.遺跡地層試料の年代測定 検証のために再調査された北海道「総進不動坂」、山形県「袖原3遺跡」、宮城県「上高森遺跡」のほか、熊本県大野E遺跡、大分県早水台遺跡、およびロシア・ザイサノフカのポシェット遺跡とサハリンのセンナヤ遺跡の地層についてOSLまたはIRSL測定を実施した。 このうち、センナヤ遺跡の3,4層と大野E遺跡の10層の微粒子試料を使用して低温IRSL測定を試みたが、以下に示す常温測定による年代値と比較すると、系統的に若い年代値を示した。その原因は明らかにできていない。 常温OSLまたはIRSL測定による年代値は以下のように得られた。 熊本県大野E遺跡 18〜70ka 大分県早水台遺跡 7〜30ka ポシェット遺跡 約5ka センナヤ遺跡 150〜200ka 3. 測定試料を軽減する試み 従来、測定試料としては400mg程度が必要であったが、微粒子法では50mg程度で測定可能となった。
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