本研究は、これまでの教授学習論を再考し、知識が他者との相互作用の中で創造される過程を明らかにし、新たな協同的な教授学習理論と指導方法を構築すること、及び、構築した協同的な教授学習理論と方法をもとに、教師への支援体制を確立し提供することを目的としている。 研究は、次のように行った。(1)はじめに、今日、研究者の間で関心を集めている協同的(協調的)な学びの研究以前に実践されてきたアメリカ合衆国と日本の協同的な学習研究について考察を行った。次に、社会的構成主義等の考えに依拠した協同的な教授・学習研究について検討を行った。(2)我が国の理科の教師が小グループを活用した授業についてどのように捉えているかその実態調査を行い分析した。(3)協同的な学習を理科学習に取り入れその効果について検証授業を行い、協同的な学びを深める授業デザインを検討した。その内容は、次の5点である。1.小グループの話し合いを理科学習に取り入れることの効果、2.小グループを構成しているメンバーの組み合わせの違いが学習に及ぼす影響、3.相互協力関係から生まれる子どもの概念構成、4.話し合いの場面へ外化物を導入することの効果、5.協同的な学習を支える環境づくり。こうした協同的な学習の検証授業とその実践研究の中から得られてきた知見は、子どもが知識を形成していくには、自分の考えを明確にし、他者の考えが見えるようにすることが必要である(外化、外化物)、情報を収集する場を用意し、調べた情報をもとに話し合いをさせる必要がある(事前の知識)、グループは、小学校段階では等質、中学校段階では異質のメンバーで編成することが有効である、協同的な学習を支援する学習環境の構築が不可欠であるということである。こうした研究成果を踏まえ、子どもが自分で知識を形成し、理解を深めていく授業デザインを示した。
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