研究概要 |
本研究の目的は,図形の概念形成を促進する学習指導の方法を確立することである。本年度は図形に関する諸概念の関係についての理解の状態3から状態4への移行を促す要因のうち,図形の概念をその定義にあてはまるものすべての集合であると考え,定義の意味を正確に捉えることに視点を当てて,それに関わる学習指導を構想することを試みた。そのために,図形の概念の定義についての小学校6年生と中学校2年生の捉え方を明らかにし,それぞれの特徴を基に,定義の捉え方が図形の概念形成に及ぼす影響の解明を行った。まず,図形の概念形成過程における理解の状態の移行を促す要因として,定義の捉え方が重要であることを明らかにし,図形の概念の定義の捉え方についての実態調査の結果を整理した。さらに,その結果を考察することによって,小学校6年生と中学校2年生の定義の捉え方を分析して,その特徴を示し,それぞれの捉え方が図形の概念形成にどのような影響を及ぼしているかを解明した。その結果,次のことが明らかになった。第一に,図形の概念の定義を的確に捉えていることにより,図形の概念間の包摂関係を理解できるようになり,概念形成が促進されるということである。第二に,否定的な表現を使うことが図形の概念間の包摂関係の理解を妨げるということである。第三に,定義を必要条件として捉えていることが図形の概念間の包摂関係の理解を妨げるということである。このように,定義の捉え方が図形の概念形成に及ぼす影響があることから,これらを考慮して,状態3から状態4への移行を促す要因を生かして指導を行うことにより,図形の概念形成を促進することができると考えられる。 さらに,今年度の結果を平成13,14年度の研究成果と併せて,図形の概念形成を促進する学習指導の方法をまとめて示した。
|