昨年度、文献調査によって、子ども達が学習課題に対してどのような興味をもっているかが、それを学ぶ意欲と密接に関連することが示唆された。そこで、具体的な学習課題として遺伝を取り上げ、子ども達が遺伝に対してどのような興味を持っているかを調査した。その結果、高校生は、生物IBで扱われている内容よりもむしろ遺伝子組み換えやクローンといった新聞等で取り上げられている内容に強い興味を示すことが明らかになった。 しかし、この結果から遺伝に関する課題志向問題学習を展開することには無理があった。子ども達が興味を持つ内容を焦点化することはできても、それらの内容に関して子ども達がどのような問い(問題)を持っているかが不明だったからである。そこで、平成14年度は、子ども達が遺伝に対してどのような問いを持っているのか、それらの問いがどのような構造を持つのかを明らかにすることを試みた。大学生を対象とした調査を行ったところ、次の結果が得られた。内容的には、遺伝に関する問いが29.2%、遺伝子工学に関する問いが27.6%、遺伝子に関する問いが20.3%であった。昨年度の興味調査の結果から、遺伝子工学に関する問いが多いと予想していた。しかし、実際には「遺伝子の本体」に関する基礎的な問いが多かった(問いの約8割を占めていた)。一方、疑問詞によって問いを分類したところ、reallyやwonderの問いが50%、次にhowの問いが25%、what、when、whoの問いはわずか6%であった。「本当?」「不思議だ」という感性的な問いが多かった。また生物の履修状況によって、問いの内容が異なることも示された。これらの結果から、問いを構成し、その問いを解決するためには、知識が深く関わってくることが示唆された。
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