研究概要 |
本研究は、理科を学ぶ意欲を育成するために、どのような授業をどのように展開すればよいかという問題を、Watts、M.が提唱する課題志向問題解決(Task-Orientated Problem Solving)を手がかりとして考察することを目的としたものである。 本研究の成果は、大きく3つに分けることができる。第一点は,課題志向問題解決の概念を文献資料に基づいて明確にしたことである。問題解決学習においては、どのような興味を持って問題を設定するか、その問題の重要性をどのように認識しているかによって、生徒の学習意欲が異なることが示唆された。 第二点は、具体的な問題解決の場面として遺伝を取り上げ、遺伝に対する高校生の興味と重要性の認識度について調査を行った。その結果、高校生は生物IBや生物IIの内容よりも生物IAや新聞等で扱われている遺伝内容に対して興味を示し、かつそれらを重要であると捉えていることが明らかにされた。さらに、大学生を対象として、大学生の持つ遺伝に関する知識と遺伝に対する問いとの関連について検討した。その結果、問いと興味との関連性が示されるとともに、遺伝に関する知識をたくさん持っている大学生ほど、多くの問いを持つことが示唆された。 第三点は、課題志向問題解決を中学校の授業のなかで実践し、その授業が学習意欲の育成に有効であるかどうかを実証したことである。音に関する課題志向問題解決の授業と通常の授業を実践し、「理科学習意欲測定尺度」を用いて学習意欲の変化を調べた。その結果、課題志向問題解決の授業を行った中学生は、有能感、挑戦、観察・実験の下位尺度において、通常の授業を受けた中学生よりも有意に得点が高かった。学習意欲の向上に、課題志向問題解決が有効であることが示唆された。
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