研究概要 |
本年度の研究実施計画に基づき,以下の3テーマにつき教材化学的に新規の知見を得,教育実践を通して新規教材の妥当性を検証するとともに,当該教材による生徒の認知構造の変化を調べた。 1.光合成とエネルギー問題…微細藻は,OHP(ハロゲン)光源による20分の照射で,多量の酸素を発生する。市販品が入手できるクロレラを用い,複数の中学校で地球大気の成因や二酸化炭素の削減と関連付けた授業実践を行い,季節や天候に関係なく実施できる光合成教材としての定着を図るとともに,この教材による生徒の認知構造の変化を調べた(理科の教育,投稿中)。また,光合成をモデルにした太陽電池の電極に植物色素(アントシアニン)を用い,色素の可視部吸収と電池の起電力の関係を明らかにした(化学と教育,投稿中)。色素増感型太陽電池は近年,資源エネルギー庁が教育現場への無料配布を行っており,この情報は植物試料の選択に有効に活用できる。 2.植物色素…藻類のカロテンが,水産動物の体内で酸化される道筋を示す教材を開発するため,薄層クロマトグラフィーによるキサントフィルの分離・同定を行った。アスタキサンチンの還元によって,数種の色素標品が得られたことにより,教材化の準備がほぼ整った(投稿準備中)。 3.水と環境…先報のCOD簡易測定法につき,少量の試薬(セライト試薬)で測定できるよう,また,河川等のCOD領域(1-10ppm)を正確に測定できるよう改良した。同時に,測定後の廃試薬の処理法を明らかにした(化学と教育,52巻2号)。なお,簡易測定法と公定法の相関関係についても調査した(投稿準備中)。この方法は,第5版実験化学講座1基礎編I(丸善)に紹介された。 なお,これまでの研究成果は冊子(約180頁)としてまとめ,3月末に刊行する予定である
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