研究概要 |
当初の研究計画に基づき,次の3テーマにつき教材開発を行い,以下の成果を得た。 1 光合成とエネルギー問題。 1)微細藻(クロレラ,スピルリナ)をポリエチレン袋中に入れ,OHPで30分間光照射を行うことにより,季節や天候に関係なく光合成を観察できる教材を開発した。同時に,この実験に最適な微細藻の種類と濃度,スピルリナの簡易培養法,発生する気体中の二酸化炭素と酸素の定量法を提示した。また,クロレラを用い,地球大気の成因や大気中の二酸化炭素の削減と関連付けた教育実践を行い,この教材による生徒の認知構造の変化を調べた。2)光合成と同じ仕組みで太陽光を利用する色素増感型太陽電池の試作を行い,市販品を改良して安定性の良い電極を作成することに成功した.それを用い,身近な植物の色素(アントシアニン,クロロフィル,カロテノイド)が優れた光増感作用を持つことを示した。また,アントシアニンの水酸基の数と光増感作用との間に,相関関係があることを明らかにした。 2 植物色素。 1)植物色素(a c)を,薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離・同定する教材を開発した。a陸上植物のアントシアニン。b緑藻,褐藻,紅藻のクロロフィル,カロテノイド。c紅藻,藍藻のフィコビリタンパク質。2)海産動物(エビ,カニ)のキサントフィルをTLCで分離・同定し,藻類の色素が動物体内で酸化される道筋を示す教材を検討した。 3 水と環境。 1)過マンガン酸カリウム,水酸化ナトリウム,セライト545の粉末混合物(セライト試薬)を用いるCODの簡易測定法を再検討し,少量試薬による測定法,低COD領域の測定法,廃液処理法を明らかにした。また,セライト試薬を用いた教育実践を行い,この教材による生徒の認知構造の変化を調べた。2)水の電解後の溶残気体を利用する燃料電池につき,当初電圧を高くし,長時間の使用に耐えうる条件を明らかにした。
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