ドイツの初等教育段階である基礎学校では、教科横断的・総合的学習である「事象教授」(Sachunterricht)が設置され、環境教育のための中核的な教科とみなされている。地球環境問題が世界各国共通の課題となり、その解決へ向けた取り組みがなされている中、ドイツでは1980年の文部大臣会議の決議以来、環境教育はさまざまな教科の中で実践される「諸教科を横断する授業原理」として公認されている。 事象教授における環境教育の実践に関しては、次のような3つの主要な方針、(1)伝統的な環境保護教育、(2)生態学的な原理ないしシステムとの関わり、(3)自然体験志向の萌芽、を確認することができる。これまでは、環境保護の問題が強調され、テーマとして「水の供給と汚水処理」や「ごみ」がよく取り扱われていた。しかし、教員養成、現職教育、継続教育における経験を踏まえ、最近では「生活空間としての森」あるいは「グローバルな環境問題」などのような生態学的に方向づけられたテーマも増えてきている。また、自然体験遊びのような経験も重視されている。 事象教授に関わる教職課程においては、生態学的、環境教育学的に方向づけたプロジェクトの開発もみられる。このプロジェクト「生態学を具体的に-地域の環境教育」は、大学教員と学生及び教員、学生、地域の関心のある市民の協同モデルとして構想されている。具体的な取り組みとしては、(1)校庭の活用に関する特別の授業の開発と試み、(2)地域の現職教育のための生態学的、環境教育学的な提案の開発と実施、(3)大学の開放、(4)環境教育に関する具体的な授業の開発と試み、(5)大学での教員養成における生態学的-環境教育学的提案を統合する構想の開発、などが挙げられる。体験的な学習活動を支援するために、生態学的な視点を中心に据えた教員養成の段階での取り組みが構想され、実践されている。
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