研究課題
本調査の動機となったことは、国立高専への国費留学生選抜試験数学の問題出題委員となり、留学生出身国の数学教育事情に関する調査が我が国では皆無に等しいことを知ったことである。平成14年度には、イラン、インドネシア、カンボジア、スリランカの現地調査を行った。現地では主に、JICA事務所、日本大使館、文部省初等中等局・高等局、高等学校、大学、職業訓練施設などを訪問し、留学生に直接関係する人達に面談し、情報・資料の収集を行った。また、全高専の全留学生を対象に、記述式のアンケート調査を行った。全体的にいえることは、どの国でも大学数が少なく、良い大学良い学部卒でないと良い就職をすることができないため、大学選抜は非常に激烈となっている。国費留学生に応募できるのは、大学選抜試験(または卒業試験)を上位で通過した者、あるいはさらに大学に在学し、在学時の成績がトップレベルである者、等である。従って本調査では、高等学校における数学教育の内容・学習法だけでなく、大学選抜試験に要求される学力、大学での学習カリキュラムについての調査が必要であることが分かりその調査も行った。また、高専での学習をスムーズにするために、高専における勉強と留学生の学力についての調査、学習や生活面でどのようなことを必要としているかの調査も必要と考え、上記アンケート調査を実施した。以上の調査から留学生の教育に関する多岐・多量の情報が得られたが、要約すれば、どの国でも高校教育と大学選抜試験との間には大きなギャップがあること、エリート教育は大学入試の勉強が前提にされている感があること、従って高校教科書だけの分析では留学生の学力は正しく測れないこと、しかし国によって学習事項と方法には大きな違いがあること、大学は教養部でまだ専門の勉強までには至っておらず、高専での学科選択のためには正しい情報を多く与える必要があること、事前に専門の学習について案内が必要であること、留学生活の成功失敗は、学力以外にも学園生活全体を良く考慮し対応する必要があること、等などである。
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