研究概要 |
本研究は身近に存在する塩を中心とした教材開発を行い,二年の研究期間に課題解決に向けて研究を行ったものである.その内容は,次のような三つの章からなっている. 第1章は,「塩に関連した研究および実験開発」というテーマで,小学校から高等学校まで実施可能な塩に関するテーマを選び,研究や実践を試みたものである.例えば,(1)天日塩からアボガドロ数の測定法の開発では,天日塩のへき開を利用して直方体結晶を製作し,その体積と質量の関係から,アボガドロ数を簡便に精度良く求める方法を開発した.(2)イオン交換膜を利用した海水の濃縮と淡水化では,現在,日本の食塩製造の主流となっているイオン交換膜を用いた電解法による海水を濃縮する試みを行った.(3)土器を用いた海水から塩を取り出す試みでは,学校で実践を行う前に,古代の製塩遺跡の視察や教育センターでの再現実験を試み,予め問題点などを詳細に検討した.その後,学校における塩作りの実践を行った. 第2章は,「塩に関連した河川および湧水の水質調査」を行い,それぞれの測定結果と特徴等を調べた.(1)屋久島の河川調査では,海からの送風塩の影響を調べ,それらは,地形的,地理的および気象的影響など複合的な原因によることを確認した.(2)塩谷および内畑鉱泉群の水質調査では,古くから「塩の湧く川」として知られている塩谷地区の複数の鉱泉と数Km離れた内畑地区の鉱泉をイオン分析からその特徴と違いを比較した.(3)徳島県吉野川流域の湧水群の調査では,海岸線からの距離と湧水に含まれる海水成分の関係などを調べた. 第3章は,「学校における塩作りの実践」というテーマで,小学校から高等学校まで,「土器を用いた塩作り」を10校で実践を行った.これらの内容は,研究協力者の先生方の貴重な実験データや実践であると共に,それぞれの学校における特色を生かして十分な準備の元に実施したものである.今後,新たな学校において「塩の関する」環境教育や総合的な学習の時間を行う際の参考になるものと考えている.
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