研究概要 |
本研究では、生体情報を計測し、学習での情動的要因によるさまざまな活動を評価する方法を検討した。これらの指標を基に学習活動を検討し、情報技術を用いた効果的な学習方法を検討するための基礎資料とした。以下に、今年度得られた結果をまとめる。 (1)瞳孔面積変化に関する検討 課題解決によって瞳孔面積の大きさは変化することが知られている.本稿では,課題解決として暗算課題を与えた時の,瞳孔面積変化の周波数パワースペクトラム密度(PSD)の違いを検討した.課題として,1×1桁と1×2桁の暗算課題を用いた.瞬目時の瞳孔面積を推定した瞳孔面積変化を周波数解析した結果,PSDは1.6〜3.5Hzの区間で実験要因が有意であり,平均瞳孔面積と同様に統制,1×1桁,1×2桁の暗算の条件の順に増大した.また,瞬目時の瞳孔面積推定をしない場合と結果を比較したところ,瞬目を含む瞳孔面積の場合は,PSDが全体的に高く,瞳孔面積変化による顕著な違いを検出することが容易でないことがわかった. (2)視点移動に関する検討 視点移動の分析方法を検討するために、計算課題の難易度が瞳孔面積、瞬目、視標追従時の視点移動に与える影響を検討した。課題の回答が遅い場合や誤答の場合に瞳孔面積と瞬目の発生が増大し、課題の難易度を反映して変化することを示した。視点移動は、課題の難易度に応じて、サッカードの大きさ、サッカード出現率が減少することを明らかにした。 (3)脳波に関する検討 漢字の視覚提示に対する初期の処理過程を、脳波を用いて検討した。既知漢字、未知漢字、偽漢字をランダムに提示し、これらに対する、事象関連電位(ERP)の違いを検討した。その結果、左側頭葉後部で有意な違いが認められた。刺激提示後、270msから活性化の度合が異なる事がわかった。これらのことから、漢字提示の際に活性化する脳部位の検討を、事象関連電位を用いて行なった。
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