研究1では、小学生(4年生または6年生、男女別)各2〜3名ずつのグループに物語を読み聞かせた後、各1台のコンピュータ上でアニメーションソフトを使ってその場面を作成させた。子ども達は、本ソフトの持つ、「大きさ、向きを変える」といった柔軟性を活かして、用意されていない部品を作り出す(たとえば、「太陽」を縮小して「花」に仕立て上げるなど)ために想像力を働かせ、お互いの意見をぶつけ合いながら、個性ある作品に仕上げていた。女子の集団では相手の活動に対し、感想や説明を述べる発言が多いのに対し、男子の集団では、登場人物になりきって台詞を言うなどの「ふり遊び」的な発言が多かった。画面構成のための部品が限られていることがかえって、「見立てる」「代用する」という工夫を生み、「相談」・「評価」などの相互作用を増やすことがわかった。 研究2では、健常幼児と母親のペア、中度知的障害をもつ中学生女児と女子大学生のペアのそれぞれにおける構成課題解決場面での子どもと大人の相互作用の共通点を探った。健常児とその母親に関しては、1組1台のノートパソコンで、小学2年生向けパズル課題を幼児が行うのを母親が援助していく様子を観察した。他方、知的障害児と大学生のペアに関しては、幼児用ブロックを使用し、見本と同じものを作成するのを大学生が援助していく様子を観察した。ビデオ記録の行動・発話分析から、対象児にとって難しすぎず易し過ぎない、ヴィゴツキーのいう「最近接発達領域」にあたるレベルの課題においては、対象児の年齢や障害の有無によらず、よく似た相互作用の様相がみられることがわかった。すなわち、大人は、サブゴールを示し、課題を分割しながら子どもを導いたり、どのようなヒントを示せば成功するかを子どもの遂行状況を見守りながら考える行動をとっていた。その相互作用の様相は、対象児にとって容易な課題とは全く異なることも明らかになった。
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