本研究は、今年度をもって終了となる。これまで多岐に渡ったセッティングで研究を進めてきたが、いずれも録画録音がしやすい固定的な場面で、活動参加人数も2〜3人という状況であった。また、内容は自由制作やゲームであった。そこで本年度は、「垂直的」相互作用として、学習障害児の個別指導における教科学習の場面と、通常学級でのコンピュータの授業の場面をとりあげた。 研究1では、全般的な知的レベルは境界線領域にあるが、言語性検査結果が動作性検査結果より有意に高い学習障害児(中1男子)に対する数学の個別指導場面における対象児と指導者の相互作用を分析した。本児のようなタイプの児童・生徒にとって、言語による説明だけでは理解しにくいが、構造化された視覚的なスキーマの操作と結び付ける形で言語説明を加えることが有効であることが確認された。さらに、指導者による言語教示を本児が模倣することによって、自己教示が可能となり、まったく解けなかった問題が独力で解けるようになった。研究2では、小学校5年生12名のクラスにおけるコンピュータ室での作文の授業を分析した。ICメモリを用いることにより、今まで記録しにくかった、机間支援中の教師と子どもの細かいやりとりを記録することができた。教師はコンピュータ操作の質問に対応すると同時に、つまずいている児童に対し一人ひとりの興味・関心に寄り添いながらイメージを膨らませる手助けをした。一人ひとりに関わる時間は数10分〜2分という短さであるが、児童の作文を音読して内容を即座に把握したり、画面上で文の順序を入れ替えたりすることが容易なため、数師は有効な支援ができた。 以上より、参加者の意図を他の参加者が理解すること、また、参加者が自分の行動や考えを自己チェックしながら活動を進めることが、コンピュータを囲んだ「場」の効果として特徴的であると考えられた。
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