研究概要 |
今日の初等・中等教育を取り巻く環境は非常に厳しい。登校拒否生徒の増加や学習におけるコミュニケーション不足は大きな問題である。研究代表者などは、これまで認知科学的な視点から、学習者の内省や思考の外化までを支援するための協調学習モデルを構築してきた。本研究のモデルの特徴は、学習者が、個人で学習するモードと共同で学習するモードの間を自由に行き来でき、議論におけるあいまいな部分を「協調作業における癒し」の形で共有できることにある。このようなモデルに基づき本研究では、学習者同士が直裁的に会話を行う必要がなく、学習とは直接関係ない他者とのコミュニケーションから始め、次第に学習コミュニティが形成されるようなシステムを構築中である。共同体の多様な成員が,自由に,気楽に発言しているうちに,しだいに相互の会話をつなげて,建設的に議論をかみ合わせ,協同の目的に議論を収斂させていくことを支援する会話支援システムのプロットタイプを提唱し,中学校理科授業におけるグループ討論の場面で実践した。 その結果,生徒どうしの同時発言が可能になり,疑問・問い直しが,対面グループ時に比べて増加した。つまり,メタ認知能力が高まったと言える。また,グループ討論の可視化により,思考過程の振り返りや教師による支援が可能になった。そして,教師が討論を見守るとともに,タイミング良く適切な言葉で介入することにより,生徒の思考に深まりが生まれ,「擬似的協調学習」の発生を防いで協調学習を高めることが可能となった。
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