研究概要 |
「異文化間コミュニケーションにおける感情表現の認知」に関して本研究では異なる文化でも共通する感情表現として「笑い」を取り上げ4つの研究を実施した.研究1では、日本人大学生に対し場面・相手などの文脈の違いが、様々な笑いの許容範囲に与える影響を検討するための質問紙調査を実施した。クラスター分析の結果,同一の感情表現でも文脈が異なると許容範囲が異なることが明らかとなった.また社会的態度を測定する質問項目と笑いの種類との関わりを検討した結果,社会的な営みに積極的にかかわる傾向が強いタイプの人の方が笑いの許容範囲に対して明確である事が示された. 米国人大学生に同様の質問紙調査を行った研究2では,クラスター分析の結果,文脈における笑いに対して日米間で認識に差があることが示唆された.またいずれの文脈も日本に比べリラックス場面や快適場面であったことが明らかとなった. 研究3では米国人男女の動画像を用い,欧米人との日常的な関わりと笑いの認識との関連性を検討するという実験を日本人大学生に対して行った.その結果,笑いそのものに対する認識には異文化交流量に関わりなく普遍的なカテゴリーが存在することが示唆された.さらに動画刺激に対して,本研究が用いた刺激のサイズや画質は今後の同種の研究の一つの基準として採用できる可能性を示した. 上記の動画刺激を使用しCGIを用いたWeb調査を日米の大学生に実施し,「笑顔」と「真顔」に対する印象変化をSD法で評定した結果を因子分析により検討した研究4では,モデルの影響はあるにせよ,笑顔が概して好ましい印象を高め,若々しく個性的で活発なイメージを上昇させる傾向にあることを示唆した.さらに笑顔の場合は日米で一致した評価がされるのに対し,真顔になると日米で評価に差が生じやすい事が明らかとなった.この事は異文化での対人認知では笑顔の果たす役割が自文化でのそれより大きいという事を示唆するものであると言えよう.
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