研究概要 |
視覚障害に起因する情報格差(デジタル・ディバイド)をなくすべく,触覚と聴覚を利用した視覚障害者用マルチメディア端末を開発・検証することを目的とし、システムの試作と視覚障害者による試用を行なった. システムは,3軸のアーム先端に取り付けたペンデバイスを入力装置として,触覚ディスプレイ及び音響を出力とするものであり,従来の同様なシステムと比較して,視覚障害者自らが触覚ディスプレイ面に対して位置入力が可能であることが,大きく優れている点である.アプリケーションソフトウェアとしては,ペンで描画した線画を触覚ディスプレイで表示するものや,動くボールを表現したピンに対してペンデバイスで打ち返すことができるピンポンゲーム,漢字学習ソフトなどを製作した. これらのアプリケーションを実装したシステムを,筑波技術短期大学で学ぶ視覚障害学生や,シンポジウム等のイベントに参加した視覚障害者,横浜市立盲学校学生,福島県立盲学校教諭・学生などに評価してもらったところ,解像度は荒いものの,直感的な位置に対する操作が可能な点は高く評価していた.ピンポンゲームに関しては,音情報と触覚情報,位置入力がミックスされた未知の体験と思われ,システムに触れた全員が非常に高い興味を示していた.漢字学習ソフトに関しても,部首ごとに分けて触覚提示できる点など評価が高かった. また,これとは別に,ペンデバイスが直接触知面上を動かせる場合と,触知面と離れている場合とで描きやすさに影響が出るかというシステム構成の基本となる実験も改めて行なった.この実験により,描画点を消去するという作業においては,直接入力する形式のものが優れていることが分かった.しかし描画に関しては,ペンデバイスの拘束感覚が不評であり,今後の改良が望まれる.
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