本研究では、「へき地小規模学校の児童生徒」と「教員志望学生」とが、造形的対話を通して、造形イメージの生成と造形作品制作を共同で行うプログラムを開発する。プログラムは、(1)造形的対話ステップ、(2)造形作品制作ステップ、(3)作品の提供ステップを含み、本年度は(2)を中心に研究を進めた。具体的には以下の通りである。 (1)昨年度に開発した「相互対話プログラム」を運営し、その結果を造形作品制作に反映させる研究を行った。研究方法は学生による造形作品の制作プロセスを記述し、参与観察を通して、その有効性を検討した。この制作は汎用PC利用と大型プリンター出力を前提としたものである。また、有効性は、「相互対話プログラムによる相互理解、演目理解内容」を制作物として表現し、その理解の質が深まつたか否かとした。考察結果として、コラージュ技法を用いた制作が中心となり、素材イメージの重なりによりテーマを表現した。この技法では、素材イメージの収集が重要となり、テーマに沿った収集が可能な場合に良い結果が得られた。従って、素材イメージのデータベースを準備し活用することが有効であると考察した。 (2)全体プログラムの運営を通して、「教員養成プログラム」として視点が重要となってきた。学校に対する造形的支援を「短期的な無償の労働奉仕」を超えて、教員養成プログラムとして位置づけるためには、以下の観点が必要であると考察した。 ・本プログラムで獲得した技能が、教育現場でいかに機能するか。 ・養成段階、初任段階、熟練段階といった全体的な職能発展プロセスを明確にする概念構成。 (3)対話的作品鑑賞の資料収集を行った。テートモダンにおける作品提示方法とプラド美術館における方法との比較から、テートモダンが示す発展的な鑑賞方法のプロセスを理解することができた。この方法を、学生と児童生徒の対話的鑑賞に援用することで、演目に対する理解が深まると考察した。
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