本研究では、「へき地小規模校のための造形支援プログラム」運営し、その結果を考察した。考察結果は以下の通りである。J.レイヴらの正統的周辺参加理論を援用して、教員養成プログラムとして検討した。正統的周辺参加理論は、従来から考えられていた教員養成の学習目標に新たな視点を加えるものである。それは、教員養成とは、教員志望学生が教師コミュニティに参加する社会的実践行為であるとする視点である。この視点は教員養成の学習目標を、「いかに教員としての身体、教員としての頭脳を生成させるか」から、「いかに教員コミュニティ(共同体)への参加の度合いを高めるか」へと移行させる。そこで教員志望学生が小学校への造形的支援を通して「教師コミュニティ」へ参加するプロセスを示した。造形的支援とは小規模小学校での学芸会(学習発表会)に使われる背景画制作である。この制作のプロセスでは、教員志望学生が様々な要素(依頼演目、関連資料、用具、材料、児童が演目に持つイメージ)を集め、検討し、再構成することで造形的に「可視化」するプロセスであるといえる。可視化の段階はいくつかに分かれているが全体の展望をもって制作するというよりは、局所的に問題・課題を解決し「可視化」する局所的な開示であった。結果として以下の知見を得た。「造形支援プログラムでは、教員志望学生がへき地小規模校の児童と対話を行いながら作品を完成した。この制作を通してのねらいは、学生達が、それぞれの持つ多重成員性を生かし、児童達との交流を深める"社会的実践として表現の場"を生成することである。」
|