高等学校福祉系学科における専門教育および大学の福祉科教員養成教育の検討するべき課題を明確化することを目的として以下の調査を行った。まず、高等学校福祉系学科の担当教員の専門教育についての意識やニーズを調査した。さらに、大学の福祉科教育法担当者に対して、教科「福祉」の教員養成課程のある大学の教育内容や高等学校福祉系学科の専門教育に関する大学教員の意識等を調査した。 調査の結果から、福祉系学科では、福祉関連の資格(ホームヘルパー2級、介護福祉士受験資格等)を取得できることが大きな特色となっていることが明らかになった。しかし、生徒に資格取得をさせることにより、授業が資格取得のための内容に偏ってしまう、「福祉の心」が教えられない等の問題が出てきていることから、教員は資格取得について見直す必要性を感じていることが示された。その一方、資格を生かせる福祉の現場で働ける即戦力を養成していかなければならないという気持ちを教員は強く持っており、葛藤があることがうかがわれた。また教員から、教育内容のなかに「福祉の心」を取り入れることが重要であるという意見が多く挙げられたが、その具体的な内容や方法は確立されておらず、あいまいであることが確認された。今後、教育内容や方法を検討しなければならないことが示された。 また、福祉系学科の問題点や今後の在り方について、大学教員と高校教員との間に意識の差異のあることが確認され、大学教員は高校福祉系学科の現状をあまり認識していないということがうかがわれた。
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