本研究の目的は、子どもの社会性や人間性を育てるために、教科の統合・再編を含めた「社会認識の形成」を目指す教育、特に、「伝統生活文化」を中心教材に据えたカリキュラムの在り方を構想し、実践することである。 本年度の研究成果は、以下のとおりである。 1.平成5年度から現在まで実践されている秋田県の「ふるさと教育」の実地調査及び資料の収集分析を行った。秋田県では、「ふるさと教育」をすべての学校で郷土の自然や文化、先人の生き方などを学ぶものと捉え、この教育を学校教育の共通実践課題として位置づけた各学校のカリキュラムを意図的・計画的に編成している。現在、「ふるさと教育」を生かした総合的な学習の在り方に関する研究開発が行われている。 2.埼玉県羽生市の「藍染」を教材とする小学4年の社会科授業を実践した。「伝統生活文化」を子どもたちに身近なものとして把握させるためには、歴史的・地理的な背景・要因を知るとともに、体験的、作業的な活動を取り入れることが不可欠である。 3.ドイツの「郷土教育(Heimatkude)」及び「社会的学習(Soziales Lernen)」の理論と実践に関する文献・諸資料を収集し、若干の分析を行った。ドイツの基礎学校では、「社会的な人格形成」「相互行為」としての「社会的学習」の必要性が叫ばれている。その中心教科が「事実教授(Sachunterricht」である。 4.「事実教授」の改革も進行中であり、その一つの方途が5つの観点(社会・文化、空間、自然、技術、歴史)による再構成であり、「郷土教育」の復権である。
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