本研究の日的は、子どもの社会性や人間性を育むために、「伝統生活文化」を中心教材に据えたカリキュラムの在り方を構想し、実践することである。2年日の今年度の研究成果は、以下の通りである。 1.戦後教育における「伝統生活文化」学習の位置・役割・意義を明確にした。取り上げた内容は、(1)民俗学の成果の活用と生活文化学習:成城学園初等学校の社会科プラン、柳田國男・和歌森太郎の社会科教育論、(2)中核教材による総合的学習論:富士宮市の「富士山学習」、滋賀県の「琵琶湖学習」、(3)秋田県の「ふるさと学習」である。 2.上記の「民俗学の生活文化」「中核教材」「ふるさと」の3つの視点から、「荒川流域の伝統生活文化学習」の教材を開発した。そのテーマは、(1)荒川水系の新河岸川流域の舟運・水運、(2)伝統漁業と農業:川魚料理(食文化)と「わさび栽培」、(3)水害・洪水・堤防:治水と水防の知恵、(4)祭り:祭りと地形・地名との関係、(5)信仰:水神信仰の5つである。 3.江戸時代の「紅花栽培」を教材とした中学校社会科の実験授業を行った。身近な地域教材を活用した歴史学習の有効性と来年度実施する検証授業の可能性を探った。 4.2000年改訂のドイツ・バイエルン州の学習指導要領を分析し、郷土教育の復権、民主主義社会における共同生活の基礎を培う「社会的学習」の意義と内容を明らかにした。また、学校教育全体を通して、子どもが責任感のある、自立した市民の役割を十分に果たすように成長することを目指す「政治的・社会的学習」の授業構成を究明した。
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