金沢方式による聴覚障害乳幼児の訓練法は、早期から文字言語を導入することに特徴がある。すでに本方式による訓練の結果、重度聴覚障害であっても就学前までに良好な言語獲得ができることを実践報告した。本研究では眼球運動の軌跡解析の手法を用いて、文字言語の意味理解が早期から成立することを客観的な方法で検討することを目的とした。「対象」今回の検査に同意を得た健常成人2名(男性1名27歳、女性1名20歳)、健常児童2名(男児1名8歳、女児1名9歳)、聴覚障害児5名(男児2名、6-7歳、女児3名、6-10歳)を対象とした。対象者およびその家族には実験の趣旨を説明し、実験参加への同意を得た。聴覚障害児は100dB以上の高度難聴児で、主たるコミュニケーション手段は話し言葉であり、口頭にて実験の内容が十分理解できるレベルにあった。対象児(者)には、ビデオ画面を注視してもらったビデオ画面上には絵1つと、その絵に関連する文字単語と、他にその絵と関連のない文字単語1つを提示した。各課題は10秒ずつ提示され、13組の刺激を与えた。眼球運動解析にはナック社のEMR-8を用いた。分析はEMR-8解析システムを用いてアイマーク視線軌跡や停留視線軌跡などを各組ごとに行った。「結果」健常成人、児童、聴覚障害児ともに既知の文字単語については、絵に相当する文字に停留視線時間が長い傾向があった。「まとめ」絵とそれに対応する文字単語の対応課題を作成して、聴覚障害児を対象に眼球運動解析システムを用いて分析した結果、既知の文字単語とそれに相当する絵に眼球の停留時間が長い傾向があった。本方法を用いることによって、文字単語と絵の対応課題で文字言語習得過程の分析ができる可能性がわかったので、今後はさらに低年齢の聴覚障害児についても検討を進める予定である。
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