上記の研究課題を達成するために、平成13〜14年度の二年間にわたり、下記の通り研究を進め、成果を得た。 1.説明的文章の読解に関わる児童の認知発達の様相をとらえる指標とするために、大学生が説明文を構成する際に用いる説明方略を調査し、説明の開始部、締めくくり部、および内容の論理構成に関わる方略を明らかにした。 2.戦後から現在までの国語科教科書の説明的文章教材の展開構造を調査し、入門期説明文教材への導入過程に特色が認められるものとして、「どうぶつえん」(東京 書籍・昭和27〜51年)、「のりもの」(光村図書・昭和33〜42年)の2例を見出した。これらの教材には、説明文教材へと導入する執筆者の明確な意図と説明文指導観がうかがえた。 3.小学校入学期の説明文教材の指導の実体を探り、次の二点を明らかにした。 (1)入学期の説明文教材が教師の研究的な授業やその教材研究の対象になることはきわめて少ないこと (2)入学期の説明文教材は「本格的な説明文」とは認められておらず、音読、構文、絵本から文章主体の読み物への「橋渡し教材」などの指導に用いられていること 4.読書環境と説明文スキーマの発達の関係を明らかにするために、幼児雑誌『キンダーブック』の説明文の展開構造を調査し、文章の導入部には、小学校の説明文教材と変わらないさまざまな方略が用いられており、説明という行為の中で、「説明の受け手を説明世界に参加させる」ことの重要性が確認された。この結果からは、大学生が用いる説明方略との多くの共通点も認められた。
|