これまでに総合的な学習の時間にとりくまれている「国際理解教育」において、異なる文化的アイデンティティを持つ他者と対等に協調していくという多文化共生教育が実現されていないという問題点を指摘し、多文化共生を核とする国際理解教育カリキュラムを、小学校におけるアクションリサーチを通して検討した。 「国際理解教育」で想定されている「外国人児童」とは、多くの場合入管法の改訂に伴う南米等からのニューカマーと呼ばれる外国人の子弟であり、いわゆるオールドカマーである在日3世などの韓国・朝鮮人児童は非常に周辺的にしか考慮されていない。この背景には、ニューカマーの児童生徒数が公的な調査によって把握されるのに対し、在日韓国・朝鮮人児童生徒については在籍数さえ把握されてこなかったという非対称があった。 本研究では、「国際理解教育」カリキュラムを、日本人の子どもに対する異文化の紹介と交流にとどまらないものへと転換すること、在日コリアンを含む外国人児童生徒と日本人の児童生徒、すなわち、全ての子どものための多文化共生の視点を持つ教育としての国際理解カリキュラムの構成と評価を行うことを目的とした。従来の国際理解教育に一般的に見られる問題点を1)イベント主義2)文化学習主義3)文化本質主義という点から検討し、これら問題をのりこえるための多文化教育カリキュラムを、異なるものとの対話によってかけがえのない個を認め、どのように関係性を築き、学級文化を変容させていくかという教育方法学的視点から研究した。 第二部では、学校全体のカリキュラムを、多文化共生の視点から改造する手だてとして学校設置科目を新設した、亀山高校定時制における学校ぐるみのカリキュラム改訂の実践を検討した。 第3部では、日本以外にアイデンティティを持つ子どもたちがどれくらい在籍し、どのような教育活動や取り組みが行われているかを調査した三重県教育委員会の実態調査(2000.12)の結果を検討し、また三重県下における在日外国人児童生徒教育の様々な取り組みを取り上げ、そこから読みとることのできる国際理解教育の課題を検討した。
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