平成13年10月の追加採択通知を受けての研究スタートであったため、実質3年半の研究期間であった。 スウェーデン王国の性教育は、必修化されて以来50年以上の歴史を持っており、わが国の性教育関係者の中でも、スウェーデンはこの分野での先進国であることは常識とされているが、スウェーデンの性教育の歴史と理論、教育実践の状況についてのわが国への紹介は、きわめてわずかの文献に見られるに過ぎない。そこで本研究では、スウェーデン性教育協会(RFSU)や、Stockholm教育大学(LHS)その他の研究機関との研究交流をすすめることによって、スウェーデン王国の性教育の歴史と現在の理論的・実践的課題を全体的に把握し、それを研究論文としてわが国に紹介するとともに、スウェーデン王国の性教育関係者と、性教育の理論上・実践上の共通課題について意見交換を行ない、両国の性教育の発展に資することを目指した。 平成13年度(14年2-3月)、14年度(9-10月)、16年度(9月)にそれぞれ10日〜2週間程度、スウェーデン王国を中心にデンマーク王国・ノルウェー王国等を含む北欧地域への渡航、研究調査・資料収集を実施した。その際、上述のRFSU、LHSをはじめ、教育行政機関であるSkolverket、 Stockholm市内の青少年クリニックなどを訪問して、スウェーデンの性教育(「性と共同生活」の学習)の実践及び研究の第一線に立つ専門家たちにインタビューを行なった。その成果の一部は裏面に掲載した論文でも発表しているが、全容は研究成果報告書において詳細に報告している。 上記の専門家との人的交流だけではなく、現地在住の日本人通訳者の協力も得ながら、スウェーデンの性教育の歴史と現状に関連する理論・実践資料の収集、情報収集の機会を持った。具体的には、平成14年度の渡航の際に、LHSで開催された「『性と共同生活』に関する第1回全国会議」を通訳者の同席を得て傍聴した。また同じく平成14年度の渡航時に、Stockholm市内の学校外教育施設「冒険健康センター」において、近隣の基礎学校6年生の思春期に関する学習を参観した。こうした経験と先に挙げた青少年クリニック関係者との交流などを通じ、スウェーデンの性教育が単に学校の授業という場で行なわれているのではなく、学校外のさまざまな社会機関との有機的連携を形成しながら行なわれていることがわかった。しかし一方RFSUやLHSの研究者への聞き取りから、性教育専門家は他ならぬ学校での性教育の強化発展が必要であると考えており、そのためのさまざまな努力が行なわれていることもわかってきた。
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