研究概要 |
昨年度までの研究において,CG表現のシミュレーション性についての意識調査を行い,その結果,子どもと大人の間では大きな違いのあることと,その要因の幾つかを示した。本年度は,その結果から,昨年度までに整備したシステムを用いて,実験的な教材を運営しデータ収集・分析を行った。 年度途中に経過をInSEA(ニューヨーク開催)世界大会にて報告した。同学会にて,世界的な傾向として,3D動画制作の教材は,'80年代より可能性と教育効果が再三指摘されているにもかかわらず,実際の授業研究が皆無であることを改めて認識した。そこで,具体的開発教材を,3D動画の制作に集中することとした。 これまでの研究から,3D動画作品の制作教材の特色として以下が指摘できる。従来の造形表現との関係を払拭し,子どもの感じ方に近い教材発想となる。子どもにとっては,身近な視覚文化メディアである。空間認識能力,動的認識能力の獲得が期待できる。メディアリテラシーの獲得が期待できる。モデリングの指導は時間を要する。 昨年度までのデータ収集法に加え,中学生を対象にした実験的教材を対象にデータを収集し,それをもとに教材の改良を進めた。当該の実験的教材の中心的目的は,表現活動へのモチベーション喚起,立体操作の導入,時系列変化操作の導入。取得データは,概ね,上記の目的が達成されていることを示したが,被験者が微妙な位置設定に困難を感じていることも示していた。実験教材実施の過程で,事後にシステムを自由に操作する時間を設けたが,表現方法を発見する極めて活発で多様な活動が見られた。今後の教材改良の見通しとして,特に困難であるモデリングの指導には,一斉指導の効果は期待できないがゆえに,分岐の多いハイパーテキスト的なチュートリアルを開発する必要があることが指摘できる。
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