「映像メディア表現」の本質と特性を明らかにしながらカリキュラム策定を目指して、美術教育講座に所属する絵画・彫刻・デザイン・工芸・美術理論美術史・教科教育法を担当する本学教員が一致して実証的研究を進めたことは、教員養成系大学の美術教育において特筆されるべきことである。 「映像メディア表現」を軸にした3年間の研究は、来年度から美術教育コースが「芸術表現教育コース」に統合されることによる科目の統廃合や教科横断科目の新設、学年系統性などのカリキュラム改善に反映する一つの契機となった。 また、美術の履修科目においての講義・実習を通して「映像メディア表現」に対する学生の認識とメディアリテラシーが高められた。事例として、デジタルカメラやビデオによる作品制作及びフィールドワークの記録、コンピュータを活用した制作やポートフォリオ作成、鑑賞教材CD制作などがある。さらに、インターネットによる調査・資料収集能力の向上、ビデオ等による映画鑑賞による映像文化の認知・批評力の獲得、図画工作・美術の授業のための教材開発などに効果があることが実証された。 このように「映像メディア表現」へのアプローチは理念・内容・方法において多様である。それぞれの科目の特徴と専門性を生かし、多角的に「映像メディア表現」に迫った研究は、自明とされるカリキュラム構造を問い直す上で大いなる参考となった。 一方、附属中学校教員と共同で研究代表者は『マルチメディアで広げる美術の授業』(明治図書出版)を刊行することで現場教育との連携を深ることができた。さらに、この著書をテキストとして使用しながら、学生の映像メディアリテラシーと教育実践力を高めることができた。
|