最終年度の本年度は、第一年度の基礎研究をふまえて試行的授業実践と成果の集約に取り組んだ。 (国語教育領域) 説明的文章教材の読みにおける間接認識に重点を置いた試行的授業実践に取り組んだ。要点は、以下のとおり。 ・説明的文章の読みの学習をテーマにした特定の校内研究の授業作りに関わって、極力ことばの理解を通して間接的認識力の育成を図った。 ・授業者たちの理科学習と国語科学習との学力観、認識観、学習方法観などの意識に関する調査を行い、特に認識観・学力観の相違の意識が明確かどうかを捉えた。 ・国語科説明的文章教材の分析を再検討し、国語と理科の双方から見て評価点が異なることを見出した。 (理科教育領域=主に生物学) 「一本の木」に着目し、学習者観で嗜好や認識が異なることを前面に出した試行的授業実践に取り組んだ。 ・学習者各自がそれぞれ「好きな一本の木」を選び、多角的な角度から調査を行い、相互にレポートし合う実地調査的授業を進めた。 ・学習者各自の認識のありようとその個性がかなり自然に明確にされた。 ・学習者各自の認識の異なりを相互交流の中で多重の認識、認識の相違のメタ認識という新しい認識を生む契機と捉える実践によって、多様な認識が得られるとともに、その進化も図られた。 <成果の集約> ・小学校教師に対する「国語の説明的文章学習」と「理科の学習」との認識の相違を調べる調査を行い、教材の内容面、言語的特色面に対する意識に多様性があることと、意識そのものが未成熟であることを見出した。 ・「私の好きな一本の木」という学習者の個性や認識の多様性を前提とした授業を行い、認識の発露においてかなり有効なモチーフであることを見出した。 ・小学校国語科説明的文章教材を国語教育学と生物学の両方の領域から評価的に再検討し、両者の視点の取り方により、一定の相違があることが見出された。これは特に国語科説明的文章学習の独自をとらえる基礎的な資料になると考えられる。
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