研究概要 |
近年の青少年の喫煙・飲酒・薬物乱用問題の深刻化にともない,学校における有効な防止教育への期待が高まっている。従来の学校健康教育は,知識の獲得に専ら焦点を当てたものであり,行動変容という観点からは有効ではなかった。しかし我が国でも最近になって,妥当な行動科学の理論に基づいた喫煙・飲酒・薬物乱用防止プログラムや教材が開発され,広く利用できるようになってきている。ただし多くの教師は,そうしたプログラムや教材を適切に活用する自信に欠けており,期待される効果を上げていない。そのため,行動変容に有効な喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を普及するためには,現職教師に対する指導者研修が極めて重要な役割を果たすものと考えられる。本研究においては,従来の講義を中心とした一方的な伝達型の研修会の限界を考慮して,ワークショップ(参加型研修会)を,一昨年度,昨年度に引き続いて企画・実施した。ただし本年度は,ワークショップ形式で実施する研修会の長さを2日間から1日半に短縮し,指導者の人数も1名とした。ワークショップの前後に実施した質問紙調査の結果によれば,ほとんどの参加者は研修会を昨年度までと同様に肯定的に評価し,とりわけ研修会が「とてもわかりやすかった」あるいは「かなりわかりやすかった」と回答した者の割合は,従来よりも高かった。また喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を実施する自信がある者の割合も,研修前の41%から研修後は84%に増加していた。以上のことから,研修会の長さを短縮した場合であっても,内容や方法を工夫することによって,喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を実施する自信を高めることができることが示唆される。しかし,自信のレベルをさらに高めるためには,模擬授業を通じた練習とフィードバックを取り入れることが不可欠であると考えられ,ワークショップの長さを従来のように2日間確保することが望ましいと言える。
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