研究概要 |
本研究の目的は,新学習指導要の保健体育科における「体ほぐしの運動」とストレス・マネージメント教育とを包括し,教育現場において児童・生徒の「心と体をほぐす」ために実践的検討を試みることである。初年度の目的は、「体ほぐしの運動」とストレス・マネージメント教育に関する国内外の実践資料や文献等を収集して、検討することであった。 「心」と「体」の関わりやストレス・マネージメントの観点からみると、心理療法として、欧米ではダンス・ムーブメントセラピー(以下、DMTと略す)が実践されており、近年日本においても幾つかの病院で試みられている。しかしながら、DMTは学習指導要領の内容に直接関わるものではなく、わずかにDMTの一手法を、「体ほぐしの運動」の一つのアプローチとして紹介している文献がみられただけであった。そこで今回は、主としてDMTに着目し、「体ほぐしの運動」の文献的検討と同時に、研究代表者の参与観察によるDMTの実践資料を中心に検討した。それらの主な結果をまとめると、具体的なDMT的アプローチとしては、ピックアップリーディング、スペース探し、シェイプ、リズム遊び、コンタクトワークなど、「体ほぐしの運動」の活動とオーバーラップするものが多かった。次に、セッションという枠組みによる安心性の確保があげられた。そして、動きによって、個人セッションではセラピストのクライアントに対する共感、受容、支持により、グループセッションではグループダイナミクスの共感、受容、支持によって、自己とのそして他者との非言語的コミュニケーションが成立し「心と体をほぐす」可能性が示唆された。これらのことは、DMTの治療的意義に限らず、「心と体をほぐす」ためのストレス・マネージメントや自己開発などの「予防・開発」的な観点においても重要と考えられた。
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