社会科として位置づけられている歴史授業も、国家・社会の形成者の育成という目標を実現することが求められているが、実際にどのような授業として組織すればよいのかを理論的原理的に考察し、具体的実際的に解明することが本研究の目的である。 平成13年度では、(1)外国における歴史授業の収集分析と代表的な歴史単元の分析、(2)わが国の新しい歴史授業の収集分析とその構造と問題点の解明、(3)新しい社会科授業の構想研究を行い、平成14年度には、(1)外国における歴史授業の収集分析と代表的な歴史単元の分析、(2)わが国の新しい歴史授業の収集分析とその構造と問題点の解明、(3)新しい歴史授業の構想として制度や理念を疑う授業の開発を行い、平成15年度には、(1)新しい社会科授業や歴史授業の開発と研究を行い、(2)3カ年の研究をまとめ、研究成果報告書を作成した。 本研究において明らかにしたことは次の4点である。第1は、出来事史、事件史、通史というこれまでの歴史教育や歴史授業の原理を越えたことである。本研究では、このような常識や通念自体を疑い、それを越えた歴史教育や歴史授業の原理を見つけたことである。第2は、現代民主主義社会における社会原理である社会形成を社会科教育とともに、歴史教育の基本原理にすることで、歴史授業を革新したことである。第3は、歴史教育によって民主主義社会の形成を担う市民を育成する方法原理を示したことである。第4は、現代社会に求められている歴史教育を民主主義社会の市民育成という社会科教育の本来の課題に即して検討し、民主主義社会における歴史教育の役割を明らかにしたことである。
|