研究概要 |
平成13,14年度に,「戦後家庭科教育成立関係史料に関する調査研究」というテーマで科学研究費交付を申請したのは,これまでの研究過程で収集した,家庭科教育の成立と定着過程に関する相当量のGHQ/SCAP文書並びに日本側史料に加えて,全国に散逸している占領期家庭科教育史料を新たに調査し,整理・考察,集大成することによって,占領期の家庭科教育政策並びに家庭科の授業実践や生活改善への寄与等についての正鵠な歴史的事実を確定するためであった。 この目的を達成するために調査し,収集したのは,(1)GHQ/SCAP文書,(2)桑田百代史料,(3)小山田春子史料,(4)清水房史料,(5)IFEL及び中等教育研究集会関係史料,(6)徳島県家庭科関係史料,(7)指導主事との往復書簡,(8)『明るい家庭生活』,『アメリカの住宅問題』等のCIE教育映画フィルム,ラジオ番組『明るいわが家』の台本,演劇『目覚め行く家』の台本等であった。とりわけ,(2)桑田百代史料は,IFEL,ナショナル・リーダーの米国視察,各種協議会と現職教育等に関する豊富な一次資料に満ちていた。 このように(1)〜(8)の諸史料を収集・整理・考察することによって,家庭科の成立と定着に関する基礎史料を整備し,この教育の歴史と本質を追究しようとする研究者の共有の財産にすることが本研究の使命であり,この点は達成できたと考えている。ただし,この度の報告書は,紙数の制限という問題に阻まれて,収集した膨大な史料の集大成という面では十分とはいえない。そのような限界があるにしても,占領期家庭科教育史研究の基礎資料として今後の学問的発展に寄与することは間違いない。なお,筆者の手元には,本報告書において提示することができなかった相当数の関連史料が保管されている。占領期教育研究者の利用に供するために,現在整理を急いでいる。
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