朝鮮は小国でありながらも、518年を存命し、世界史における一王朝として最も長い歴史をもつ国である。朝鮮は朱子学儒教を統治理念として取り入れ、独特な政治・制度・経済・文化・教育などを創り出した。このような儒教国家に新たな変革をもたらしたものは、開国以来、米国宣教師によるキリスト教の布教活動が朝鮮の政治・文化・教育などに新しい時代を予告していた。彼らの最大目標は布教事業を最重視しながら、近代文明の恵みとも言える医療事業や教育事業を組織的・体系的・系統的に展開した。その結果、朝鮮民族は従来の中華文明だけではなく、新たな西洋文明の存在を認識することになる。西洋の学校教育は、キリスト教を中心に発展した音楽が学校教育の重要な教育内容として位置づけられたが、朝鮮の学校教育については存在しない新しい芸術教育として登場した。このような洋楽が近代教育を象徴する学校から、唱歌教育を通して普及されることは、唱歌教育だけではなく、社会の発展にも結び付くものであった。日清・日露戦争を契機に洋楽としても愛唱された唱歌は、近代教育を主導する私立学校から高揚した。ことにキリスト教主義学校を中心に文明開化、民族精神、抗日思想などの歌詞づけ讃美歌の替歌が広く歌われた。しかし、愛国唱歌教育運動の先行研究は、愛国唱歌に関わる政治的な歌詞が散見される反面、音楽そのものの実態がどのように発展されたかは解明されていない。したがって、本年度研究では、愛国唱歌教育運動を新しい視点から、歴史的・民族的な思想を考究しながら、洋楽はどのように導入・普及されたかを分析すると共に、論述の展開は、愛国唱歌教育運動、特に音楽教育の水準が高いキリスト教主義学校などを中心に洋楽普及の実態を考察した。
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