本研究は、文章生成過程の観点から作文能力の育成を理論的・実証的に図っていこうとするものである。本年度は、以下の2点を中心に研究を進めた。 1、小学校教科書作文教材を用いた授業実践の検討 文章生成に必要な読み手意識を高めていくためには、他者との関わりは欠かせない。そこで「書くこと」の教室において、他者(クラスメイト)が書き手にとってどのような役割を果たしているのかを中心に、学習指導書における授業実践例の検討を行った。それをいくつか見るがぎりにおいて、他者はどぢらかといえば書き手の推敲を支援する者として位置づいている場合が多いことが分かった。 2、読み手意識を高めるための授業実践 文章生成の思考研究では、熟達者は常に読み手意識を働かせながら書いていることが指摘されている。そこで、本年は記述前における読み手意職を高めていくための授業実践を小学校5年生を対象に行った。その結果、記述前において、様々な読み手を想定させ伝えたいことを考えさせていく指導は記述前指導のひとつとして有効であること、特に書くことを苦手としている児童に対して効果が伺われること、児童は読み手意識を働かせることの意味を自覚的に捉えることができることが明らかになった。
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