本研究の目的は、文章生成過程に着目した作文指導法の開発を理論的・実証的に行っていくところにある。研究の手順は、以下の通りである。 (1)米国における文章生成過程研究及び過程重視の作文指導の現状を概観する。 (2)我が国の小学校教科書作文教材の実態を、文章生成の支援という視点から捉える。 (3)「読み手」に着目した作文指導を小学生を対象として行いその有効性を探る。 まず、米国における作文指導は「プロダクトからプロセスへ」という流れにあり、現在の過程重視の作文指導は多岐にわたっていること、また、そこにおけるそれぞれのアプローチは、対立するものではなく補完し合うものとして位置づけていく必要性のあることを確認した。 次に、小学校教科書作文教材(平成12年度版)は、「社会的状況」に働きかけながら文章生成を支援する視点が弱いことが明らかになった。 以上を踏まえながら、「読み手」に関する授業や調査を行うことによって、 ○「読み手」意識を促す具体的な支援は、それに対する認識を深める傾向にあること、さらに、作文を苦手とする児童に対して特に有効性が認められること ○表現したものを読み合うという活動は、児童の書き方に対する考えを、徐々にではあるが確実なものにする傾向にあること ○児童が行う作文評価のあり様は、4年生を境としてその変容が見られること 等を確認した。
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