研究概要 |
図形カリキュラムの基本原理構築のために平成13年度はまず図形感覚に関する認識論的研究を行った。図形感覚は新しい時代の図形指導における目的の1つとして注目されているが,その実体は漠然としている。そこで『図形指導における「図形感覚」の意味について』では,主に現象学的研究に基づいて図形感覚の意義や特質,知覚的機能を探究することにより,図形指導における図形感覚の意味を明らかにした。また図形感覚の意味に基づく事例研究を通して,図形認識過程および図形問題解決過程における図形感覚の必要性についても指摘した。なお本研究により,平成13年度全国数学教育学会「学会奨励賞」を受賞した。 また豊かな図形感覚を育成するためには図形に関する知識だけではなく,図形の「部分と全体」に関する認識や「知覚的変換」の認識等も必要である。『図形感覚を育てる図形指導』では,図形指導においてこれらの認識を促すためには部分図形の選択的知覚を経験させることや、しきつめおよびタングラムの活動を積極的に取り入れること等の具体的な手立てが必要であることを主張した。 さらに『図形指導における明証性の認識に関する研究』では,図形に関する知謙の有無を図形指導の成果とするのではなく,それらを「正しいと確信しているか」「何を根拠に確信しているか」といった明証性の認識に着目した。図形に関する明証性は図形概念の理念性と客観性の認識の結果として生ずるとともに,両者の認識の推進力としても働いている。明証性の認識には理念性の認識過程における「対象の現出の構造」と客観性の認識過程における「他者の見解に対する了解の構造」,そして「対話による間主観的客観性の構築」が必要である。また図形の明証性の認識は図形に対する意識や見方にまで影響を及ぼすことを示し,現在の図形指導を反省した。
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