研究概要 |
本年度は,上記の研究課題についての3年計画(平成13〜15年度)の初年度にあたる。そこで,当初の年次計画にそって,大正・昭和初期及び第2次大戦後の昭和20年代の2期にわたって,新教育,言い換えれば,子供の生きる力をはぐくむカリキュラムの作成に取り組んできた学校,すなわち東京女子高等師範学校附属小学校(現在,お茶の水女子大学附属小学校),奈良女子高等師範学校文学部附属小学校(現在,奈良女子大学附属小学校)及び明石女子師範学校(現在,神戸大学発達科学部附属明石小学校)のカリキュラムやそれに基づく実践及び評価に関する資料(前記2校発刊の教育研究雑誌「児童研究」,「学習研究」及び「兵庫教育」に収録)の収集に努めた。 また,大正・昭和初期の新教育期の背景や教育思潮及び第2次大戦後の新教育期の背景や教育思潮を理解するための資料(戦前の新教育に関する雑誌「新教育研究」及び戦後の連合国軍民間教育情報局収集・保存の資料「CIE文書」)の収集に努めた。 収集した前述の資料の本格的な分析は,次年度以降に行う予定であるが,概括的な分析を行った結果として現在までに明らかになった点は,以下の点である。 1 いずれの学校の戦前,戦後のカリキュラムともプラグマティズム教育思想の影響を強く受けている。その場合,社会性,共働性よりも個人の自主性・主体性の育成に重きが置かれる傾向にある。 2 学習形態としては,いずれも低学年教育に合科を行っているが,それぞれのカリキュラムの組み方には学校の独自性が発揮されている。 3 学習内容としては,いずれも教科書にとらわれない内容(単元)を含んでいる。しかし,逸脱の程度には学校差がある。 4 評価の観点からみた場合,理論的には評価観点が明示されているが,実践例は少ない。 次年度には,前述の概括的な分析を,もっと詳細にまた深く行うつもりである。
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