基礎的な数学学力(Numeracy)の獲得に学習困難を抱えつまずいたままにされてきた児童生徒の存在が、スペシャル・ニーズのある子どもの教育として改めて教育実践課題となっている。ここで、このような児童生徒を教える教師に具体的かつ直接的に学習達成への見通しを与えるものは、つまずきを克服し基礎的な数学学力を獲得した事例である。このような事例の収集は、数年間にわたる教授/学習の継続が必要なので非常に難しい。本研究では、数と計算の学習にスペシャル・ニーズのある児童・生徒について治療的な教育を行い、学習過程における学習困難の現れ方や学習困難を克服し、所与の学習目標に到達していく様子を観察してきた。 本年度は、昨年度から引き続き、発熱による障害が中枢神経系に確認されている子(発語構音障害が観察され、情緒障害もあると判断された)、水痘症による障害が中枢神経系にあると考えられる子(診療時にそう予見されたほか、右足を引きずる運動障害が観察されている)、自閉的な特徴が観察される学習困難のある子(学校では行動や注意を補助する介助者が付いている)、母親は学習障害を心配しているが特定できずローアチーバー、あるいはスローラーナーと思われる子、典型的な包括性学習障害があると判断された子などについて、学習記録のデータベース化を進めた。 このデータベースは教育現場の教師に供するためにWEB上(http://plaza4ts.edu.u-ryukyu.ac.jp/)で構築している。シーケンシャルな検索を中心にデバッグと仕様の改善をほぼ終了した。ランダムアクセスのためのキーワードの設定と各データについてのコメント作成が、治療的教育の継続とともに次年度以降の課題となっている。 なお、本研究に基に就学前の学びについての教材(CD)のβ版を開発した。
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