本研究の目的は、ジュネーブ学派の相互作用論を手掛かりとして、生徒のミスコンセプションの克服を基盤した数学教授法の開発を行うことである。とくに我々は、この相互作用論の中の「弁証法-教授学的方法」を、生徒のミスコンセプションを克服する手段として適用する。 この研究目的を達成するために、我々は、ブロッソーの教授学的場の理論を基礎として教授法の理論的構築を行い、教授学的実験を計画した。実験の問題は、2種類の幾何の証明問題であり、「三角形の合同条件」を利用して解決する問題と「三角形の比の定理」を利用して解決する問題である。この問題解決において、「3点が一直線上にある」ことを図形の「知覚的把握」によって認めるというミスコンセプションを同定した。また、このミスコンセプションを生徒に克服させるために、我々は、教授学的場の系列「ミスコンセプションを認識する場」、「ミスコンセプションを克服する場」、「獲得した知識を利用する場」を設定した。 この教授法の有用性を実証するために、中学2年生と3年生を対象として、4つの教授学的実験を実施した。実験結果から、この教授法によっでミスコンセプションをもつ生徒がミスコンセプションを克服し、新しい問題解決において、ミスコンセプションを克服する過程で獲得した知識を利用して、多様な活動を生み出すことが明らかになった。このことから本教授法の有用性が実証された。
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