視覚障害者は英語学習において、ダブルハンディをもつ。すなわち通常の文字が読めない、または読みにくいことに起因するハンディと自立学習のための学習環境が限られているというハンディである。特に語学学習の基幹ともいえる「読み」の能力が低い学習者に対し、コンピュータを活用した指導法の開発と実践に取り組んだ。 ・研究成果1 視覚障害者のための単語認知力テストの開発 視覚のハンディを補うためにパソコンの英語合成音声を活用、さらに画面に表示される単語を自由にカスタマイズできるシステムを開発し、単語認知の自動化レベルをはかるテストを作成した。テストの結果、認知力の低い学習者には、この.システムを使った単語認知訓練用プログラムを作成した。 ・研究成果2 視覚障害者のための英語リーディングサポートreadKONの開発 readKONは、PC画面に表示された単語および文章を英語合成音声が読み上げるシステムである。システムは非常に単純であるが、応用範囲は広い。単語練習から、フレーズ読み練習、速読練習等様々な読みのスキルアップトレーニングに活用できる。このシステムを活用した事例研究では、読みの正確さ、読速度の向上等の具体的成果が見られた。 ・研究成果3 視覚障害者のためのコンピュータを利用した語彙サイズテストの開発 一般の英語能力テストは、その分量と時間制限のため視覚障害者には不利な点が多い。語彙サイズを測定するテストも視覚障害者に適用できるものは限られている。受験者への負荷をできるだけ少なくしたPC上できる語彙サイズテスト(kobaTEST)は、500語レベルから4000語レベルまであり、音声補助と共に画面にランダムに表示される単語について「知っている」「知らない」で答える。1回は20単語だが回数を増やせばターゲット語が増える。一般の語彙サイズテストとの比較において結果の信頼性を調べたところ、成績上位者ほど信頼度は高く、下位者においては差が大きいことがわかった。さらなるデータ分析が必要と思われる。 最終年度には、文字アクセス手段をもたない視覚障害者に対する音声テストの開発を試みた。視覚障害者用に開発されたDAISY版と日本語および英語合成音声を組み合わせたPC版を比較したところ、まだ問題点はいくつかあるが後者のPC版がテストメディアとして十分活用可能であることがわかった。
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