研究概要 |
本調査研究は,平成13年度から本15年度まで3年間取り組んできた。これはさらにさかのぼって,平成10年度から12年度まで,同じく科学研究費補助金により進めてきた「年少者に対する多文化教育としての日本語・日本文化適応教育についての調査研究」を,視点を変え引き継ぐものであった。 平成10年度から12年度までの取り組みでは,大阪府T市における主たる参与観察現場(ニューカマーの子どもの居場所作活動等の場)で,ほぼ毎週1回子どもたちとかかわりながら,各地の同様な活動団体や学校,教育委員会などと情報交換を行った。 その結果,これらの子どもが日本社会へ適応するためには本人に対する支援だけではなく,併せて,ホスト側の子どもたちや教職員,保護者等の意識化がなされ,制度の整備を含めた「受け入れ能力」を高めることが必要だということが仮説された。 本調査研究は,この仮説を受け,教育環境論の視点から,上述の主たる参与観察現場及び大阪市教育委員会の取り組みに参加しながら,検証のための調査研究を続けてきた。併せて各地の現場等と情報交換を行ってきた。 前者の主たる参与観察現場では,子どもたちとの協議の上,「半端じゃない母語学習」に取り組み,子どもたちの熱心な学習と素晴らしい成果を生み出した。 後者の大阪市教育委員会の取り組みは,平成14,15年度の文部科学省の「帰国・外国人児童生徒と共に進める教育の国際化推進地域」指定を受け行ったものだが,「日本語指導と教科指導のつながり」,「国際理解教育の実践」,「母語での学習と交流」,「不就学・不登校」の四つの柱を設定し,本年度2月,最終報告を行い,この報告の一部も仮説を裏付けていると考えられる。
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